今はなき、京都の「染めの北川さん」が糸からこだわって作った
Chuitahai(ジュンタイ)№6の江戸小紋。
北川社長が存命だった10年ほど前に、半日くらい、僕と論議を交わした着物なんです。
これは、万筋の網代の江戸小紋。
厳密には、京都の板場の染屋さんが染めているので、江戸小紋とは意地でもいいません。京都の染屋さんは、「板場の小紋」っておっしゃられますが・・・。
生地の拡大は、こんなにツヤツヤしています。
本当に光っているような光沢なんです!
楽庵に来店される方にお見せすると、実際はもっと、光沢を放ちますので
皆さんビックリされます。
僕は、天下の北川さんがなんで、日本にこだわったものづくりをしないのか?とくってかかって抗議したんです。
そうしたら、福島県で和木沢絹というブランドで養蚕をしていたのだが、製糸会社が良くなくて、トラブって、信用ならないので、タイの王室の養蚕をする人間に「手繰り」で糸を作らせて、日本で織っているという話を聞いて、そんな経緯が有ったのかと納得。
「手繰り」・・・女工哀史の映画のように、機械式で繭をお湯で煮て、糸を来るのではなく、繭を水につけて、中のお蚕さんが生きているうちに手で糸をひくという工程で、糸に余計なストレスが掛かっておらず、絹糸自身の光沢を失っていないので、こんなに輝くのです。
さらに、北川の社長は、このChulthai(ジュンタイ)№6のこの江戸小紋を、
洗濯機でガシガシ洗ってるとおっしゃるのですが、ニワカには信じがたく・・・。
最初は、信じられなかったんですが、会社の女子が洗濯しているというので、
女性社員さんにお聞きすると「本当に会社の洗濯機で洗っています。」「面倒くさいので、手洗い・押し洗いなんていうのでなく、着物用洗濯ネットに入れて、洗濯機で洗っています。何かあったら、社長なんで、また作れば良いんですよ。」とアッケラカンというではありませんか?
正直、半信半疑ながらも、本当に家で洗えたら、便利だな・・・と。
それも、フォーマルに着られる江戸小紋で、洗えたら・・・と。
僕も、実際に仕立てて、恐る恐る洗ってみると、
こんなツヤツヤした生地がなんとも無いんです。
なんて、ことなんだろうかとびっくりして!
でも、自分でお手入れできる魅力は凄いし、何しろ安心してジャンジャン着れるではありませんか?
コレが、きもの楽庵が、お家の洗濯機で自分で洗える着物を作るきっかけになったんですが・・・。
絹が洗えないというのは、その糸の作り方や織り方にストレス・無理を掛けているから、できないということがわかったんです。
それからは、どんどん、こだわってものづくりをした結果、色々と、正絹でも、
洗えるものを作れるようになったんです。
こうした「荒目の行儀」や「角通し」。
「極の徳川鮫」
うちでいちばん人気なのがこの「畳目」という、古ぼけた畳のような柄。
北川さんが倒産したときは、もうこれが手に入れられないのか!!と
ショックだったんですが、以前に北川さんから独立された藤原さんという方に
お願いして、残っているこのChulthai(ジュンタイ) №6の生地を集めてもらって、
楽庵でもかなり無理して、染めてもらって在庫に持ったのですが、
そのChulthai (ジュンタイ)の白生地ももうすべてなくなってしまったそうで…。
無理して、染め出ししておいてよかったなあ・・・と、今では思っています。
この着心地は本当になんとも言われぬものですので、気になる方は是非、楽庵にお越しくだされば、僕のお着物を実際に羽織って頂けますので・・・。
男性だけでなく、女性のお客様もかなりお作りいただいています。